「ごちそうさま」としか言いようがない。

ただ、そのおかげもあってかなくてか、その後の携帯メールのやり取りは、意外なほどスムーズに続くことになる。
現在の仕事の話からプライベートな話題、プライベートな話題からまた仕事の話題へと、ぼちぼちという感じにメールを通しての話はつきない。
いい歳こいた男二人が無言で食事をし、かつ黙々とメールを送り合っている様は、冷静に見れば、まさに不気味の一言であろうが、対友人との会話としては、一応の成立はしていたのだ。友人も友人で、無言ではあったものの、表情はかなり緩んでおり、かなり楽しげである。
けれども、このメールのみでの対話には、解消し難い弱点があった。それは一連のやり取りの間に、必ずタイムラグが発生してしまうということである。やはり現代が誇る文明の利器にも、限界というものがあったのだ。
その影響は、開始から一時間過ぎたあたりから色濃く出始めるようになった。
タイムラグ中に相手を顔芸で笑わせ合うという、暇つぶしの反則手を使用せざるを得ないほどに、次第に二人のテンションは盛り下がっていき、あげくの果てには、顔の表情だけで行うジェスチャーゲームにまで、行為はエスカレートしていく。
つまり、飽きが来てしまったのだ。
この状況は、食事時間を残り30分を切ったあたりで、さらに最悪なものとなった。これまで気付かないフリをしていたはずの、近くにいたカップル達の小声での会話が、とうとう気になり出してしまったのである。
「あの人達なんなんだろうね」
「たぶんモテないんだろ」
「ぽいよね~」
「ぽいよな~」
実際は、そんな話は全くしていないのだが、実際にそう思ってしまったのだから仕方がない。最終的にはウェイターまでもが私達を笑っているような気がするまでに、私たちの被害妄想は膨らみに膨らんでいった。
そうなると、私達に出来ることは、無意味に絵文字を送り合うことぐらいのものである。友人からハートがブレイクした形状の絵文字を、3連続で送りつけられた時には、奇声をあげて踊りだしてしまいそうなほどに、私の精神は痛めつけられてしまっていた。
そして最終的には、メールのやり取りさえしなくなり、「あきらめているから、そこで試合終了だよ」とばかりに、そのまま終了時刻を迎えことになった。
しかしながら、こうした苦労の甲斐もあって、新たにわかったことが一つだけある。
それは、食事中にメールを打ちまくる人間が、世間巷で言われているほどには、いなかったということだ。
そもそもの取材趣旨を根底から覆すような結論であるが、事実、私に被害妄想を与えてくれた近くのカップル達は、メールが来ようが、電話が来ようが、携帯などには目もくれないラブラブな方々ばかりであった。
やはりリア充(リアルが充実している人)は違う。
おいしい料理を出して下さったお店の方々と、不運にもあの場に居
合わせてしまったカップルの方々に対しては、本当に「ごちそうさま」の一言以外に出せる言葉が見当たらなかった次第だ。














