最終結果「大ドンデン返しの連続で優勝はあの男に」

観客の期待通り、前年を超えるデットヒートとのなった今大会。ただその結末にはその予想をはるか超えた大ドンデン返しが待っていた。
まず、最初にスナックあけみに入店してきたのは、鈴木選手である。それから1分と経たずにワンチャイ選手が入店した。
総審判長であるあけみさんが今思いついた大会の特別規定によれば、ほぼ同時に選手が入店した場合(前後間隔10分以内)には、通常ルールである時刻順ではなく、ジャンケンによって最終確認の順番が割り当てられることになっている。
そのため、先に入ってきた鈴木選手がもしジャンケンに負けてしまえば、後に入ってきたワンチャイ選手が先に最終確認を受けることになるのだ。
このルールを初めて知った(そりゃそうだ)鈴木選手はもちろん駄々をこねたが、一時は肉体関係にあったあけみさんの怨念混じりの言葉に、言い知れぬ重み感じ、ほどなくしてこの特別規定を承諾するに至った。
そして承諾後すぐに、鈴木選手とワンチャイ選手はいい歳こいた大人二人でのジャンケンを開始。秘境の出でジャンケンのルールを全く理解出来ないワンチャイ選手ではあったが、総審判長の身振り手振りの献身的なレクチャーにより、これを理解すると、やがて彼の手からは、優勝への熱い想いを表すように硬く握り締められたグーが勢い良く差し出された。
しかしながら、鈴木選手も負けてはいない。
若干気押され気味ではあったものの、王者の大器を見せ付けるかの如く、
大きく広げた手のひらを振って出し、落ち着いてこれに対応、ジャンケンに勝利した。
だが、何故か右腕を宙に上げられたのは、ワンチャイ選手の方であった。総審判長のあけみさんによれば、彼の部族ではこれが、パーなのだとのことだ。
普段温厚な性格で知られる鈴木選手も、これに切れそうになったが、若いキャビンアテンダントとの結婚の件をまだ根に持っているのだとすぐに察して、わずか一秒であきらめ、そのまま総審判長のあけみさんにより、100円ライターの最終確認が行われることとなった。
その方法は到って簡単。あけみママがくわえたタバコに、ライターで火を点けられなければ勝利確定である。
そして、あけみさん自身の手による3、4回試行で、第四回目の優勝者はあっけなく決定した。
ワンチャイ選手のライターから火は少しも出ることはなく、カチッという乾いた音が響くのみ、初参加のワンチャイ選手の勝利である。
ただ驚くべきことに、ディフェンディングチャンピオン鈴木選手は、この決定状況においても、まだ勝利を諦めてはいなかった。
なんと、優勝決定の証としてスナックあけみの限定マッチを贈呈しようとしたところで、鈴木選手があけみさんの手を取ったのである。
そして、ドラマのワンシーンのように、緑色の用紙を取り出し、「君のために女房とは別れたよ」と驚きの一言。
実は終盤のキャンドルディナーの際に、お腹を大きくした奥さんに対し、三行半を突きつけていたのである。
男としては最低だが、勝利に拘る王者としては実にあっぱれな処理である。
これに感激したあけみさんは、ほどなくして、「ジャンケンに負けたのが先に入店してきた選手だった場合は、一応その選手の結果を見た上で優勝者を決定する」という、本末転倒な特別規定を思いついて、鈴木選手の最終確認に入った。
これにはワンチャイ選手も少し文句を言いたかったが、日本語に不慣れなので、それはちょっと出来なかった模様だ。
ただ残念なことに、鈴木選手のライターからはあけみさんによる三回目の試行で火が出てしまった。何と言う運命の悪戯であろう。それも、あけみさんのタバコに火を点けるわずか一回分だけ……その後は何度試行しても、 ライターから火が出ることはなかった。
流石の鈴木選手も、これには大きく肩を落とし、勝利を確信したワンチャイ選手の例の求婚ダンスを涙目で眺めていた。
しかしながら、この結果を受けて、あけみさんが限定マッチを渡したのは、喜びにまかせて踊り狂うワンチャイ選手ではなかった。
何を思ったか総審判長は、うなだれる鈴木選手に限定マッチを差し出して、彼を抱きしめたのである。
店内にまで駆けつけた観客は一時騒然となったが、あけみさんがこの時語った迷言により、やがて全てを理解することになる。
「総審判長であるアタイに、最後のともし火を見せてくれた貴方の優勝よ」
このあけみさんの思いつきの一言により、第四回100円ライター使い切り競技大会の優勝者が決定された。
この長き戦いに観客からは、割れんばかりの拍手が起きたが、表彰式、閉会式は、協会会長の須藤氏が不在だったため省略。
後日、優勝した鈴木選手には、10人いるかいないかの観客から祝電が届けられたが、その祝電でより先にチャンピオンの元に届いたのは、元奥
さんからの慰謝料の請求書である。
競技大会は、最後の最後まで後味の悪い結果となってしまった。















