町田 茂樹『突然の不幸』

僕にとっての彼(夏休みの友)は、彼というより彼らという呼び方の方が相応しい存在でした。
小学校一年の時は彼は一人だけだったけど、小学校二年になると、急に二人に増えたんです。
もちろん、増えた一人は姉の紹介です。
あんまり覚えてないですけど、「いつも一人で遊んでないで、たまにはトリオで遊びなさい」って感じに言われてた気がします。
取り敢えず僕は、姉の言う通りにすることにしました。
元々の自分の彼とは結構気楽に過ごせましたが、姉が紹介してくれた彼は凄く気難しい奴で、仲良くなるのに、最初は凄く苦労しましたね。
姉の彼とは、答えをそのまま写すだけの遊びをしていれば良かったんですが、その答え出て来る漢字をまだ習っていなくて、全然読めないし、書けないんです。
おかげで、写す時はちょっとした写生大会でしたよ。全く知らない漢字を、何かのデッサンのように描く能力が必要とされました。
けど、四年に上がる頃には、だいたいが理解出来るようになって、むしろ、姉の紹介してくれた彼との遊びの方が楽しくなっていました。
自分の方の彼とも、ちゃんと遊びましたけど、姉紹介の彼と比べると少し物足りなかった。
この頃には、姉紹介の彼とは回答集なしで、遊べるようになってい他と思います。
ただ、不幸って突然訪れます。
私が、5年生の夏休みを迎えたときに、6年生になった姉が僕に急に彼を紹介してくれなくなったんです。
元々は姉の彼ですので、私には何の文句を言う権利もありませんが、アレは哀しかった。
姉も小学生最後の夏休みぐらいは、自分で相手をしてやろうと思ったのでしょうが、気まぐれにも程があります。
しかも、その気まぐれすらも途中で飽きて、3分の1ぐらいの回答を埋めたあたりで、結局僕のところに持って来たんです。
彼はすっかり変わり果てた姿になってましたね。
顔中、悪戯描きだらけでビッシリなんです。渡されたときにはもう完全に青息吐息でした。
でも、それでも僕はちゃんと回答を書いてあげましたよ。
姉は次の年から中学に上がってしまうので、彼とはあの時が最後になってしまいましたけど、渡された8月31日中に、徹夜をして全部解いてやりました。
そしてあの時の眼にしみるような朝日と共に、僕と彼との時間は、永久に終わってしまったんです。
審査員の評「お姉さんのこともあるからね。」

町田 茂樹:認定段位6段
どうやら、私はとんでもないミスを犯していたみたいだ。もう少しで君の姉さんの可愛らしさに騙されるところだった。君のお姉さんは、宿題をその時だけはきちんと自分でやったみたいに言ってたけど、嘘だったんだね…残念だけど、ルール通り、彼女については段位を取り消した上で、失格とさせて貰うよ。
さて、肝心の君の認定段位についてだけど、当時は二人も『夏休みの友』がいたということで、一応、五段に認定させて貰うことにした。本当はそのレベルには達してないんだけど、お姉さんのこともあるからね。私のこと、お姉さんにくれぐれもヨロシク言っておいてくれよ。
『夏休みの友』は十分友達といえる存在だった!
以上、『段位認定競技会~夏休みの友は本当の友達だったのか?~』は、失格者1名、三段1名、五段1名、という結果に終わった。
一体何を基準にしていいのかわからないが、総合的にみれば、『夏休みの友』は十分友達といえる存在であったと言えるだろう。
なお、この認定競技会は、来年の夏休みにも開催される予定である。あくまで予定なので、先のことはわからないが、出来ればやる方向で、今後日程調整をしていたい。
まあ、あと一年もあるし、『夏休みの友』と同様に何とかなると思っている。















