鑑賞後に馬鹿馬鹿しい気分に浸れる映画。
第二回目のFavorite DVDは、当新聞のコンセプトに倣って『鑑賞後に馬鹿馬鹿しい気分に浸れる映画』をご紹介させて頂きたいと思います。
相変わらず説明臭い見出しで申し訳ない限りですが、今回取り上げる映画の題名が相当短いので、バランスが取れているといえば、バランスが取れているのではないでしょうか?
それでは、私の華麗なる言い訳はこれぐらいにして、早速レビューを始めさせて頂きます。
※当カテゴリーには少々のネタバレを含んでおります。
IT 「最後の最後になって、ちゃぶ台をひっくり返した」
『IT』は、『スタンド・バイ・ミー』、『ショーシャンクの空に』などで知られるホラー小説界の重鎮、スティーブン・キングが原作の映画です。
作品自体を見たり聞いたりしたことがない方でも、パッケージのピエロには少し見覚えがあるのではないでしょうか。
物語は全体を通して言えば、7人の登場人物達とこのピエロ(ペニーワイズ)との戦いを軸とした人間ドラマになります。
一般的にはホラーのジャンルに分類されている作品のようですが、前編での少年時代の回想や大人に成長してからの苦悩などのシーンを見ると、「彼らを襲うピエロが気持ち悪くてホラーっぽいから」という理由で、適当にそう決められたとしか思えません。
確かにそれっぽいホラー描写は沢山出てくるのですが、この映画で感じる恐怖は、ジェイソンやフレディを観た時に感じる恐怖とは丸っきり別物です。これは、視覚で感じる様々な恐怖ではなく、人生の中で感じる恐怖を視覚的に描いた作品なのです。
無理にジャンル分けをする必要もないとは思いますが、私の中でのこの映画のジャンルは、ホラーでなく人間ドラマだと思っています。
特に前編の人間ドラマには、目を見張るものがあり、あの名作『スタンド・バイ・ミー』に勝るとも劣らない出来でした。
前編は主に、少年時代を回想場面で構成されているのですが、彼らにしか見えないピエロに対する恐怖と、人生を生きていく上での恐怖というものが、見事にマッチしていて、思わず少年時代のトラウマを思い出してしまいました。
けれども、この作品を褒め称えることが出来るのはここまでです。
今回のテーマは当web新聞のメインコンセプトと合致させた「鑑賞後に馬鹿馬鹿しい気分に浸れる映画」ですから、名作ではなく迷作をご紹介しなければなりません。
読んでいる方は「なんで普通に褒めてるの?」と、途中、当ページに対する不信感に駆られたことでしょう。ご心配をおかけして、すみませんでした。
実はこの映画、いわゆる「最後の最後になって、ちゃぶ台をひっくり返した」という類の作品なのです。
ここは、映画の核心に迫る部分なので、詳しくは、本編を見てから判断して頂きたいのですが、その馬鹿馬鹿しさたるや、筆舌にし難いものがあります。星一徹も流石にここまでは徹底できません。
これもある意味では、人間ドラマ(作者の)だと言えるのでしょうが、どう考えてみても結末を考えるのが面倒になったとしか思えないようなラストでした。
風呂敷を広げ過ぎて、結末までに伏線を回収できなくなるというのは、物語にはよくあることですが、そんな生易しいレベルではないのです。結果的にそういうことになってしまった物語でも、普通は少しぐらい努力の後みたいなものを垣間見ることができるのですが、この作品にはそういうのが全くありませんでした。
期末テスト前の中学生のように、なんとかなるだろうといきなり全てを放棄して、結局なんとかならなかったみたいな感じで、本当に救いようがないのです。ラスト20分やそこらで、感心してしまうぐらいに、ここまでの全てを無駄にしてくれます。
この『これまでの時間の無駄感』は、クイズ番組の大逆転問題の比ではありません。一瞬、見ている映画を間違ったのかと思って、DVDをプレイヤーから取り出して、中身を確認したほどです。
しかしながら、見ていた自分を含めての馬鹿馬鹿しい気分に浸れるという意味では、これ以上の作品は他に思い当たりません。
暇つぶしに映画を見るとは良く言ったものですが、この『IT』ほど、きちんと色んなものを潰してくれる作品を探すのはなかなか難しいでしょう。脱力感に体中を蝕まれて、何もかもを馬鹿馬鹿しく感じてしまいたいという方には、私は自信を持ってこのDVDをお勧めしたいと思います。
しかも、この映画の鑑賞後に感じることが出来る馬鹿馬鹿しさは、フッと笑える系の馬鹿馬鹿しさではなく、フニャっと脱力してしまう系の馬鹿馬鹿しさです。極端に感受性の強い方の場合は、もしかしたら、人生への虚無感さえ感じてしまう可能性があります。
実際、私自身も名作『ショーシャンクの空に』(原作者が『IT』と同じスティーブン・キング)とは全く別の意味で、エンドロール中に身動きを取ることが出来なくなってしまいました。こんなことは滅多な作品では味わえません。何の笑いどころもない馬鹿馬鹿しさの奈落の底に落とされてみたいという方は、是非ご覧になってみて下さい。
生涯の中で一度くらいであれば、試しに観てみても損はない映画だと思います。













