私は私よ。レモンの好きなただの女子高生。
この台詞は、109-0という結果で試合に負けたのにも関わらず、ヘラヘラと笑っていた部員達に滝沢が激怒し、「くやしくないのか!」という言葉を投げかけた際に、部員の一人から出た言葉です。
これ自体は、少々熱すぎるかな?ぐらいの行動ですが、この後見事にやってくれます。
先程までヘラヘラ笑っていた部員達がすっかり反省して、「勝ちたいです!」などと言い合いながら涙をボロボロと流しているのに、なんと教師滝沢は「俺は、今からお前達を殴る!」と、突拍子もないことを言い出すのです。
「もう皆反省したんだから、そんなことしなくていいじゃん……」と、思ったのは私だけではないでしょう。一体、何処からそんな思考が出てきたのかもわかりませんでしたが、それに何故か納得して、一切反論をしない部員達の気持ちはもっとわかりませんでした。
しかも、それに続けて滝沢が言う言葉が、「殴られた痛みなど3日で消える!」なのです。これには、思わず呆然としてしまいました。冷静によく考えてみると、何のために殴るのかという説明には全くなっていないのです。
「この殴られた痛みを味わうことで、悔しさの痛みを心と体に刻んでほしい」というなら、まだ百歩譲って納得も出来ようというものですが、3日で消えるなら、一体なんのために殴るのよ、ということになります。
その場の雰囲気と勢いに流されてしまってはいけません。ここは、ある程度のツッコミを入れるのが筋というものでしょう。止めに入ろうとした部員の姉役の和田アキ子の行動が正解です。
「生徒はミカンじゃありません」とは、かの有名な金八先生の言ですが、こんな様子を見ていると、生徒は案外ミカンなのかもしれない、という疑惑がふつふつと湧いてきます。
ただ、私ももしその場にいたら、素直に彼色に染められていたことは、まちがいないでしょう。滝沢の周りの人間も、おかしな方々がほぼ多数を占めているので、これが普通なんだと無理矢理に納得させるだけの勢いがあります。
それだけに、登場人物のあだ名も凄いです。イソップとか出てきます。
その由来は、彼がイソップ物語の『アリとキリギリス』の痩せキリギリスのように、体格が貧弱であることから来ているのだそうですが、なんで作家にまで名前を展開させる必要があるのかが、一向にわかりません。ここは、普通にキリギリスと呼べばいいと思いました。
そもそも、このイソップは、ラグビーには向いていない体ではあるけれど、とにかく必死になって挑戦してみようという部員なのです。キリギリスは怠け者の代名詞なのに、これは失礼でしょう。やる気をそがれることこの上ない、方向性を誤ったあだ名だと言えます。
周りの人間のおかしな描写は、他にもまだまだあります。
中でも私のお気に入りは、謎の美少女として登場する富田圭子(伊藤かずえ)です。もう、この人は何度パニック状態にさせられたか知れません。『謎の美少女』と言ってはいますが、そんなに謎じゃないのです。
もちろん、ラグビー部員達に、いくつかの隠し事は持っているのですが、そのだいたいは、常識的に考えて、大手を奮って友人に言う必要のないことばかり、「何をもったいぶってんのよ」と液晶画面を何度殴りつけそうになったことでしょうか。
また、謎度を自主的に高め過ぎるあまりに、この子の台詞の言い回しが、笑ってしまうぐらいに意味不明なのです。ラグビー部員の一人に「お前は何者なんだ?」と、尋ねられるシーンは取り分け秀逸でした。
「私は私よ。レモンの好きなただの女子高生」
こんなおかしな回答を、レモンを持ちながら平然と言ってのけたのです。一体どんな女子高生なのか、伝わって来るものが全くありません。一瞬テレビジョンの回し者かとさえ、思いました。
ただ、これらのワザとやっているのかと思うほどの笑える描写を除いては、熱血モノとしてほぼ完璧に近い出来に仕上がっているのが、この『スクール★ウォーズ』の良いところです。随分古い作品ですが、最近はこういった内容のものが少ないので、ライブで視聴していない世代には、新鮮ささえあるかもしれません。笑える部分以外では、きちんと人間ドラマをしています。
「先生、花って字、十書いたら花束みたいだぜ」
これもドラマ中の台詞の一つですが、『スクール★ウォーズ』が、そんな華のある作品だという点については異存ありません。
笑って、泣いて、突っ込んで、を楽しみたい方には相当おススメできる作品だと、今回は太鼓判を押させて頂きます。














